さまざまな事情から離婚後の住所を元配偶者へ知られたくない人もいます。
離婚する時の手続き手順を間違えると、また引っ越さない限り住所を知られてしまいます。
役所の窓口も担当者ベースで知識が異なるため、誤った案内をされてしまうこともあります。
仮に役所の説明ミスだったとしても戸籍を再度作り直すことはできません。
戸籍の再製という方法で戸籍を訂正するシステムもありますが、この場合には利用できません。
(理由詳細については下記参照)
離婚直後に転居先からまた引っ越せば何とかなりますが、現実的ではありません。
そこで、離婚届を提出する時に、戸籍と住民票の手続きをどのようにすればいいか注意点と共に解説していきます。
少し手間はかかりますが、以下の手順で手続きを進めてください。
※どの戸籍・住民票か区別するため文章中では、婚姻中の戸籍・住民票を「旧」、離婚後の戸籍・住民票を「新」と表記しています。
1.離婚届提出
まずは、離婚届を提出します。
たとえ先に引っ越していたとしても、住民票異動より先に離婚届を提出してください。
戸籍には「附票」といってその戸籍に入っている間の住民票異動を記録したものがあります。
先に住民票を異動してしまうと元配偶者と一緒に入っている戸籍(旧)の「附票」に引越し先の住所が記載されてしまいます。
また、配偶者の住民票(旧)に「転出先」として引っ越し先住所が記載されてしまいます。
それを避けるために、婚姻中の住所のままで離婚届けを提出してください。
2.除籍
離婚届提出後の戸籍について。
離婚すれば当然、元配偶者と戸籍は別々になります。
どちらかが婚姻中の戸籍(旧)にそのまま入っていてもいいですし、どちらとも戸籍から抜けても大丈夫です。
離婚後の住所を知られたくないのであれば、婚姻生活中の戸籍(旧)から抜けてください。(除籍)
そして別の戸籍に入る(実家など)、または新しい戸籍を作ってください。
ただし、本籍地は離婚後の住所とは別の場所にしてください。
なぜなら、婚姻中の戸籍(旧)には異動先の戸籍(新)の本籍地が記載されるからです。
本籍地は必ずしも住所地である必要はありません。
もし新しく戸籍(新)を作る場合には、住所地とは必ず別の場所を本籍地としてください。
日本国内であれば住んだことのない全く無縁の場所でも大丈夫です。
注)本籍地と住所地が同じでも、厳密には戸籍と住民票の住所は別との扱いになります。例えばマンションの場合、戸籍には番地まで、住民票には部屋番号が記載されることがあります。このように、戸籍と住民票の住所は必ずしも100%一致するものではありません。しかし実際には戸籍から住所の特定はできてしまいます。
【 例 】○○市△△町1丁目1番地 ■マンション101 の場合
戸 籍 ○○市△△町1丁目1番地
住民票 ○○市△△町1丁目1番地■マンション101号室
※表記についてはあくまでも一例です。各自治体により異なります。
3.住民票異動
以下の手順で住民票を異動してください。
- 婚姻中の住所で住民票(新1)を作成(別世帯として)
- 同住所・別世帯の住民票(新1)から離婚後の新住所へ住民票を異動(新2)
一度、婚姻中と同じ住所で別世帯の住民票(新1)を作成します。
そうすることにより、元配偶者の住民票(旧)の転出先には異動先が同じ住所地(婚姻中の住所)で記載されます。
別世帯であれば、たとえ住所が同じでも住民票(新1)を元配偶者が勝手に取得・閲覧することはできません。
その後、引っ越し先の新住所へ住民票を異動します。(住民票(新2))
少し手間がかかりますが、同じ住民票(旧)から引っ越し先へ住民票(新2)を異動すると「転出先」として元配偶者との住民票(旧)に離婚後の新住所が記載されてしまうので注意してください。
元配偶者が住民票を異動しない、または後で異動した場合には転出先の住所を簡単に見ることができてしまいます。
【2019.3.7追記 すでに世帯分離済みの場合】
ブログの読者の方から情報提供いただきました。
離婚前にすでに世帯分離をされている場合には1.の方法がとれません。
離婚後にご実家や義実家などいったん別の住所で住民票を作成してから離婚後の新住所へ住民票を異動するようにしてください。
4.閲覧制限をかける
もし、配偶者との間に子どもがいて離婚後に一緒に住む場合には、もうひと手間必要です。
直系尊属(親、祖父母など)は戸籍や住民票上の住所が記載された戸籍の附票を請求できるからです。
(参考:戸籍を請求できる人)
つまり、元配偶者は、子どもの本籍地や住民票上の住所を簡単に入手できるのです。
ただし、DV、ストーカー、児童虐待などの被害者は市町村に申し出て閲覧制限をかけることができます。(DV等支援措置)
これにより住民基本台帳、住民票の写し等、戸籍の附票の写しを元配偶者が請求しても住所地はわからないようになります。
申出者はもちろんですが、その申出者と住所が同じ人も合わせて閲覧制限をかけることができます。
お子さんやご両親などと一緒に転居した場合には、合わせて対象者(元配偶者)へ閲覧制限をかけることができます。
この閲覧制限は住民票や戸籍のある市町村での受付ですので、詳しくは各市町村窓口へお問合せください。
【2019.3.7追記 子どもがいない場合】
ブログの読者の方から情報提供いただきました。
子どもがいない場合でも「なりすまし」により住民票及び戸籍を請求される可能性もあります。
ご不安な場合には子どもがいなくても念のため閲覧制限をかけることをお勧めします。
5.まとめ
残念ながら離婚後の本籍地が引っ越し先と同じ場合には隠しようがありません。
現状では、もう一度引っ越しをするしか手段がないです。
よほど切羽詰まった事情がある場合は別として、警察はもちろん役所も支援団体も助けてはくれません。
そこまで緊迫していなくても、念のため知られたくない、万一に備えて知られたくない、そういう方も多いでしょう。
離婚後には精神的にも金銭的にも厳しく何度も引っ越しなんてできません。
だからこそ、離婚時には少し手間はかかりますが、正しい手順で戸籍と住民票の手続きをして新しい生活をスタートさせてください。
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参考:戸籍の再製が利用できない理由
戸籍を作り直すことを「再製」といいます。
例えば天災等により戸籍が滅失してしまったときなどには再製します。
また、戸籍の記載が間違っている場合など家庭裁判所の許可を経て訂正することができます。
訂正後の戸籍には二重線訂正のように訂正前の記載の痕跡はまったくありません。
例えば 「戸籍太郎」の名前を間違えて「戸籍犬郎」と表記されてしまっている場合にこの方法で戸籍を作り直すことができます。
この場合、再製された新しい戸籍には「犬郎」の文字は一切でてこず、訂正された痕跡もありません。
しかし、知られたくない住所が戸籍に記載されてしまった場合にはこの再製を利用して記載住所を訂正することはできません。
なぜなら戸籍そのものには不備がないからです。
仮にそれが役所や専門家からの指示通りに手続きをして、知られたくない住所が記載されてしまってもです。
このページをご覧になられた方へ(サイト管理者より)
この度は当サイトをご覧いただきありがとうございます。
本来、離婚ではなく戸籍に関連したページを増やすために作成しました。
このページをご覧になる方は、他のページへ訪れる方と対象が大きく異なります。
離婚・夫または妻からのDV、それに付随してお子さまやお仕事・金銭面についてなど複雑な悩みを多面的にかかえていらっしゃると思います。
このページをせっかくご覧いただいたのに、行政書士ではお役に立てることは限られてしまいます。
行政書士は「内容証明」「離婚協議書」など書類作成はできますが、依頼者の代理人になって配偶者と交渉することはできません。
「住所を知られたくない」方は男女問わずご自身で配偶者と接触したくはないと思います。
必要に応じて信頼のおける弁護士への紹介も可能ですが、どうしても費用が高額になります。
予想外にアクセスが伸び、深刻な悩みをかかえていらっしゃる方に何もできずもどかしく思っております。
なぜなら、サイト管理者の失敗談をもとにしているからです。
私よりもっと複雑な境遇の方も多いことでしょう。
本来なら仕事柄、サイト内に自分の名前や写真をたくさん入れるべきところをほぼ名乗っていないことも、このページをご覧になられた方ならご理解いただけると思います。
自身の体験から私ができることが限られていると痛感しているからこそ、他のページのように「お気軽にご相談ください」とは簡単に言えずにおります。
住所を知られずに離婚をお考えの方は、今からが本当に大変だと思います。
心無いことを言う人もでてくるでしょう。
どんなに頑張っても努力が報われず絶望してしまうこともあるかもしれません。
それでも、一つ一つ目の前の問題を片付けて幸せになっていただきたいと願っております。
長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
末筆ながら皆さまの幸せを心よりお祈り申し上げます。
私自身も幸せになれるよう諦めずに頑張ります。
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