弊所へいただくお問合せにはときどき次のような内容があります。
「債務者が返済してくれない。実家へ取り立てたいので戸籍を取得してほしい。」
結論から言えば、これはNGです。
では、なぜNGなのか、例外的に請求できるのはどのような場合なのか。
以下、記載していきます。
1.実家を調べるために戸籍取得はNG
「親に取り立てしたいから戸籍や住民票で実家を調べたい!」
まず大前提として、戸籍や住民票の取得以前に、債務者の実家を特定したところで親に取り立てはできません。
債務者が返済しない、行方不明になった。
そんな場合でも債務者以外の人はたとえ親でも返済する義務はありません。
(配偶者、子ども、兄弟姉妹も返済義務はないです)
実家を調べることを目的として戸籍や住民票を取得することは不正取得になります。
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2.債務者の住民票から本籍を知りたい!
なんとなく親自身の戸籍や住民票は請求できないことを知っているのでしょうか。
次のようなご要望もあります。
「債権者は債務者の住民票を請求できるはず。おそらく実家と本籍が同じなので債務者の本籍を知りたい!」
もちろんこれもNGです。
確かに第三者請求といって、債権者は権利行使のために債務者の住民票を請求することは可能です。
(参考:戸籍を請求できる人)
でもそれは「権利を行使するために必要な範囲で」です。
実家のご両親は返済義務はないのでこの「権利を行使するため」には該当しません。
また、債務者へ内容証明や訴訟申立をするのに住民票を取得する場合でも本籍は不要です。
そのため、請求できる住民票も本籍の記載がないもになります。
たとえ債務者本人の住民票や戸籍でも「権利を行使するために不要な情報」を取得することは違法です。
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3.例外的に請求できるケース
例外的に実家を調べるために住民票や戸籍を取得できるケースがあります。
2点、ご紹介します。
①実家の親が連帯債務者や保証人などになっているケース
債務者の親が連帯債務者、連帯保証人、保証人など。
このようなケースでは法的に「督促OK」なので実家の住所を調べることができます。
ただし、債務者本人の住所から割り出すというより、借用証書など書面に記載されている親の住所から調べることになります。
このケースは「親だから」とかは関係なく、法的に請求できる人へ法律に則って請求する、という感じです。
もちろん連帯債務者などが債務者の親族ではなくても返済義務があれば請求するために必要な範囲で住所を調べることはOKです。
②債務者が死んだ
子供のいない債務者が死んでしまった場合、親(直系尊属)と配偶者が相続人になります。
その場合は相続人が債務を相続するので、戸籍や住民票から調べることはOKです。
ただし、「死んだ債務者の子供が返済しないから親の住所を調べる」はNGです。
死んだ債務者に子供がいる場合、相続人は子供と配偶者です。
その場合は、債務者の親に返済義務は発生しません。
4.まとめ
なんとなく実家の両親へ取り立てしてもOKなイメージがあるかもしれませんが。
債権債務はお金を貸したときに「契約」を結びます。
契約した時に作成した書面、つまり債権証書(借用証書、金銭消費貸借契約書など)に誰が契約者でどのような権利義務があるのか記載されています。
そこに記載されていない人は、たとえ親でも一緒に住んでいる夫や妻でも無関係です。
契約と無関係な人は返済する義務は一切ありません。
もちろん、無関係な人の住所を特定するために住民票や戸籍を取得することは不正取得にあたります。
「なにがなんでも返してほしい。」
気持ちはわかりますが、感情的になって違法行為をしないように気を付けてください。
※無関係な人の住所を調べるために住民票や戸籍を取得することは違法です。
行政書士はもちろん、弁護士や司法書士でもこのような目的では戸籍を取得できません。
行政書士が戸籍や住民票を取得できるのは「業務に必要な範囲で」です。
単に知りたい、調べたいだけで職務上請求を使用することはできません。