「お金を貸していた人が亡くなった」そんな場合でも諦めないでください。
債務は相続人へ引き継がれます。
債権者が相続人へ返済を請求することは当然の権利です。
相続人調査 ⇒ 債権回収
手順としては、まず戸籍謄本を取り寄せて誰が相続人か特定します。
その後、相続人から債権を回収します。
戸籍謄本は請求できる人が限られています。(参考:戸籍を請求できる人)
しかし、本人や親族以外でも第三者が請求できるケースがあります。
それを「第三者請求」といいます。
相続人から債権回収するためには、まずはこの「第三者請求」を利用し相続人を特定する必要があります。
また、相続人は全員を特定する必要があります。
債務は相続割合に応じて相続されるからです。
以下、詳しくみていきます。
※このページは債務者が死亡した場合のお話です。生きている債務者の実家を突き止めたいとお考えの方は「債務者の実家へ取り立てたい!戸籍や住民票取得はOK?」をご一読ください。
1.第三者請求で戸籍謄本取得
自分の権利行使や義務の履行のために必要な人、裁判所などの機関へ提出する必要がある場合などは他人が戸籍や住民票を請求できます。
お金を貸している場合には、債権者は債務者へお金の返還請求をする権利があります。
債権者がこの第三者請求を行使する場面は次のようなケースがあります。
- 債務者が死亡して相続人を特定する場合
- 債務者の住所が不明な場合
- 債権回収のために法的手続きに踏み切る場合
上記のように債権者が回収するために必要な場合には、第三者請求を利用して住民票や戸籍謄本を取り寄せることができます。
「債権回収」というと金融機関や商売での売掛金を想像される方もいらっしゃると思います。
しかし、債権者は法人である必要はありません。個人間の貸し借りでも当然の権利行使ができます。
しかし、戸籍謄本や住民票を取り寄せる場合には、当然ながら「お金を貸した証拠」が必要になります。
金銭消費貸借契約は「要物契約」といって、貸主が借主にお金を実際に貸した瞬間に契約が成立します。
書面などなくても契約は成立しているので、当然貸主は借主に返還請求をする権利があります。
ただし、戸籍謄本や住民票を第三者請求するときには「証拠(借用証書、公正証書など)」がなければ役所は受付けてくれません。
特に個人間でもお金の貸し借りをするときには、しっかりと「金銭消費貸借契約書」を作成しておくと安心です。
2.法定相続人を調査
上記で述べた「第三者請求」で戸籍謄本を取り寄せ、死亡した債務者の相続人を調査・特定します。
(相続人以外の人には、たとえ同居の親族だったとしても債権の取り立てはできません。)
戸籍謄本から相続人を特定したら、その相続人たちへは正々堂々と返還請求をできます。
例えば、死亡した債務者本人が「遺産のすべては長男に相続する」といった遺言書を残していたとしても、債務についてはその効力は全くありません。
相続人たちが勝手に「遺産分割協議」をしても債権者には関係ありません。
なぜなら、債務は法定相続割合の通りに相続されるからです。(参考: 借金の相続① ~普通に相続した場合~ )
逆に、上記の例でいえば、長男がすべての財産を相続したとしても、長男の法定相続割合分しか請求できません。
【 参考:法定相続人について 】
配偶者は常に相続人の地位にあります。
第一順位は子
子が死亡していたらその子(孫)が相続します(代襲相続)。その子(孫)も死亡していたらさらにその子(ひ孫)へと永遠に代襲されます。
第二順位は直系尊属
祖父母、曾祖父母などのうち被相続人に近い人。例えば、祖父母、曾祖父母ともに健在だった場合には、曾祖父母は相続人ではありません。
第三順位は兄弟姉妹
代襲相続は一代限り。異母兄弟、異父兄弟も相続割合は異なりますが、法定相続人です。
債権者はここでいう「法定相続人」すべてに請求できるわけではありません。
この中で相続できる人たちのみへの請求になるのでご注意ください。
<例>相続人が配偶者と子の場合。直系尊属と兄弟姉妹へは請求できません。
ここで、相続人の人数が多かった場合には少しやっかいになってきます。
なぜなら請求先が増えてしまうからです。
次で少し詳しくみていきます。
3.相続人を特定したら
2.で法定相続人を特定したら、それぞれの相続人に請求できます。
しかし、債務は法定相続どおりの割合で分割されるので、相続人が複数いる場合には注意が必要です。
具体例を挙げてみます。
<例>債権総額300万円、相続人が妻、子3人の場合
法定相続割合 | 請求できる金額 | |
妻 | 2分の1 | 150万円 |
子A | 6分の1 | 50万円 |
子B | 6分の1 | 50万円 |
子C | 6分の1 | 50万円 |
亡くなった債務者(被相続人)には300万円を全額請求できました。
しかし、相続発生後は上記表の金額をそれぞれに請求することになります。
連帯保証、債務引受け、代位弁済など別契約を結んでいない限り、上記表の「請求できる金額」しか請求できません。
法定相続割合に従って請求してください。
また、相続人の住所がわからない場合などは、戸籍の附票や住民票を請求して住所を調査することもできます。
※当事者間の合意があれば、債務引受けや代位弁済契約を結ぶことができます。上記表では妻の150万円について子Aが一緒に返したり肩代わりしたりするという契約です。
4.まとめ
債務者が亡くなったとしても、債権者は相続人から債権回収をすることができます。
それは個人間でも当然の権利なので、諦めないでください。
その最初の第一歩が「相続人の調査」になります。
まずは戸籍謄本・住民票などから相続人を特定し、合法的に債権回収をしてください。
【 追記 】
このサイトの管理者は行政書士です。
もう少し掘り下げて債権回収のコツ・裏話などを述べたいというのが本音ですが…
このサイトをご覧になられた方が「行政書士へ債権回収を依頼できる」と勘違いされないよう注意して記載しました。
それでも一部、勘違いさせる部分もあるかと危惧しております。
行政書士ができるのは書類の作成業務です。(相続関係説明図、内容証明など)
書類作成業務に必要な範囲で戸籍謄本を職務上請求できます。
しかし、債権回収において当事者間の代理人にはなれません。