お金を貸している人が亡くなった。
そこでその子どもへ請求しようとしたところ、相続放棄されてしまった…
相続放棄されたらもう債権回収は諦めるしかないのでしょうか。
相続人に相続放棄をされてしまっても債権回収ができる場合もあります。
以下、順を追って解説していきます。
1.債務者の相続人は本当にその人だけ?
お金を貸していた人の身内は子ども1人だけ。その子どもが相続放棄をしてしまった。
そんな事態でも、もしかしたら他に相続人がいるかもしれません。
相続放棄をされてしまったら、相続放棄をした人は相続人としていないとカウントされます。
法定相続では第一順位の相続人がいなければ、第二順位が、さらに第二順位の相続人がいなければ第三順位の人が相続人になります。
※第一順位の相続人が他にいる場合は第二順位や第三順位の人は相続人ではありません。
(相続順位の詳細については「相続では誰の戸籍をどこまで取得するか ~相続順位と必要な戸籍の範囲~ 」を参照ください)
まずは戸籍謄本を取り寄せて調査してください。
債務者は債権回収をするために相続人の戸籍謄本を取り寄せることができます。
第三者請求といって、権利を行使するために法律で認められているからです。
(第三者請求の詳細については「戸籍を請求できる人」を参照ください)
相続人調査をして相続人が判明したら、その相続人へ債権を請求できます。
(参考:相続人への債権回収)
2.相続人が誰もいなかったら?
すでに相続人調査済みの場合、相続人が誰もいないケースが2つあります。
1つ目は債務者に全く相続人がいない場合。
2つ目は相続人全員が相続放棄をしてしまった場合です。
そんなケースではもう債権回収は不可能なのか。
そのような場合には「相続財産管理人選任の申立て」という方法があります。
以下、裁判所HPからの引用です。
相続人の存在,不存在が明らかでないとき(相続人全員が相続放棄をして,結果として相続する者がいなくなった場合も含まれる。)には,家庭裁判所は,申立てにより,相続財産の管理人を選任します。
相続財産管理人は,被相続人(亡くなった方)の債権者等に対して被相続人の債務を支払うなどして清算を行い,清算後残った財産を国庫に帰属させることになります。
なお,特別縁故者(被相続人と特別の縁故のあった者)に対する相続財産分与がなされる場合もあります。
簡単に説明すると、相続人のいない被相続人の財産を清算するために相続財産管理人を裁判所が選任します。
その相続財産管理人が債権者たちへ相続財産の中からお金を返していきます。
ただし、この方法はデメリットもあります。
①時間がかかる(おおよそ半年ほど)
②他にも債権者があらわれる可能性がある
特に②の場合、他の債権者の債権額の方が大きかったり、抵当権など担保があったりすると満足に返済を受けれない可能性があります。
また「債権者平等の原則」というものがあって、抵当権などの担保が全くない場合には、債権者同士で平等に財産をわけなければいけません。
そのため、この相続財産管理人の選任の申立てをした債権者が多めに返済を受けれるというわけではありません。
3.費用対効果を考える
お金を貸していたのに債権回収が全くできないのは悔しいと思います。
相続人がいればその債務を相続人が引き継ぐので、徹底的に相続人へ請求ができます。(もちろん法律の範囲内です)
しかしながら、相続人が誰もいなかった場合はどうでしょう。
相続財産管理人を選任する方法もありますが、相続財産の額、被相続人の債務状況、貸したお金の金額によってはトータルで費用対効果が全くないどころか損をするケースもあります。
また、相続財産管理人選任の申立てをご自身でするのでしたら費用は数千円(予納金が必要な場合は100万円ほどになるケースあり)ですが、弁護士などに依頼すればその報酬も必要になってしまいます。
いくら貸したか、財産はありそうかなど勘案して、どこまで債権回収のために時間と費用を費やすかを決めてください。